それは穏やかな日曜日の午後のことでした。リビングで読書をしていた私の耳に、突如として不吉な重低音が響いてきました。窓は網戸にしていたはずでしたが、どこか一箇所、わずかな隙間があったのでしょう。視線を上げると、そこには私の親指ほどもある大きなスズメバチが、カーテンのあたりを不器用に飛び回っていました。一瞬にして全身の血が引くような感覚に襲われ、心臓の鼓動が激しくなるのを感じました。私は蜂という生き物が何よりも苦手で、その毒針がもたらす激痛やアレルギー反応の恐怖に、一時はその場に釘付けになりました。しかし、逃げ出すわけにもいきません。この部屋にはまだ小さな子供が寝ており、もし蜂が刺激されて子供を襲うようなことがあれば、取り返しのつかないことになります。私は意を決して、蜂を退治するための道具を探しました。しかし、戸棚の中にあるはずの殺虫剤は空になっており、予備も見当たりませんでした。絶望的な気分でキッチンへ向かった私の目に留まったのは、シンクの脇に置かれた一本の食器用洗剤でした。かつて、インターネットの何かの記事で、蜂は洗剤で死ぬという情報を読んだことがあったのを思い出しました。理屈はこうです。洗剤に含まれる界面活性剤が蜂の呼吸を止める。私は震える手で空のスプレーボトルを手に取り、そこに洗剤をたっぷりと注ぎ込み、水で薄めました。本来ならもっと冷静に配合を考えるべきでしたが、その時の私には一刻の猶予もありませんでした。洗剤濃度が高めの「特製スプレー」を手に、私は再びリビングに戻りました。蜂は相変わらず窓ガラスに激突を繰り返し、外へ出ようと焦っているようでした。私は物陰に身を隠しながら、蜂が静止する瞬間を待ちました。蜂の羽音が一時的に止まり、サッシの縁に止まったその時、私は三メートルほどの距離からスプレーを連射しました。霧状の洗剤水が空気を切り、蜂の黒い背中を濡らしました。蜂は驚いたように一度羽を羽ばたかせましたが、すぐに動きが鈍くなりました。洗剤液がその羽に絡みつき、重くのしかかっているようでした。さらに追い討ちをかけるように数回、直接浴びせると、蜂はサッシから転げ落ち、床の上でもがくような動作を見せました。あんなに恐ろしかった猛者が、たった数百円の台所洗剤に屈していく様を目の当たりにして、私は生命の仕組みの不思議さと、代用品の意外な実力に驚かされました。完全に動かなくなったことを確認するまで、私は十分以上の時間をかけました。死んだふりをして最後に刺してくるかもしれないという恐怖があったからです。最後は厚手のキッチンペーパーを何枚も重ねて包み込み、ビニール袋に入れて処分しました。この体験を通じて私が学んだのは、知識は最大の武器になるということです。もし洗剤の代用という知恵がなければ、私はパニックになって蜂を刺激し、最悪の結果を招いていたかもしれません。しかし、同時に痛感したのは代用品の危うさです。専用スプレーのように遠くから狙撃することはできず、蜂にかなり近づかなければならなかった時の恐怖は二度と味わいたくありません。