初めてのバルサン!不安だらけの一日体験記
ついにこの日が来てしまった。我が家で初めてのバルサン決行日である。最近、キッチンの隅で見かけるようになった黒い影の正体を突き止めて以来、私の心は落ち着かなかった。インターネットで駆除方法を調べ、最も効果的と名高いバルサンに白羽の矢を立てたものの、「家にいても大丈夫?」なんて検索してしまうほど、その威力に怯えてもいた。朝から準備は大変だった。食器は全て新聞紙で覆い、パソコンやテレビには大きなビニール袋をかぶせた。クローゼットや押し入れも全開にして、薬剤が隅々まで届くようにする。まるで家中が引越しの荷造り中のようだ。そして何より緊張するのが、火災報知器のカバーだ。脚立に乗って、専用の袋をきっちり被せる。これでよし。準備が整い、説明書をもう一度熟読する。ペットの金魚はベランダに避難させた。いよいよ点火の時。薬剤の入った缶を部屋の中央に置き、付属の金属片で擦る。シューッという音と共に白い煙が立ち上り始めた。その瞬間、私は脱兎のごとく玄関から飛び出し、鍵をかけた。まるで時限爆弾のスイッチを押したような気分だ。指定された3時間は、近所のカフェで本を読んで過ごす。しかし、頭の中は家のことでいっぱいだ。本当に虫はいなくなるだろうか。家具や家電は大丈夫だろうか。そして何より、帰った後の空気が心配だった。約束の3時間が過ぎ、恐る恐る自宅のドアを開ける。独特の匂いがふわりと漂う。すぐに全ての窓を開け放ち、換気を開始。1時間ほど経ってから室内に入り、床に小さな虫が数匹転がっているのを見つけた時、安堵と達成感が込み上げてきた。不安だらけの一日だったけれど、この安心感のためなら、またやってもいいかもしれない。もちろん、次も絶対に家の中にはいないようにして。