秋晴れの心地よい日、ふと気づくと窓ガラスや部屋の隅に、可愛らしいテントウムシがとまっている。一匹や二匹なら微笑ましい光景ですが、時にその数が数十匹、数百匹に及ぶと、さすがに不気味さを感じてしまうものです。一体なぜ、彼らは屋外ではなく、私たちの家の中にわざわざ入ってくるのでしょうか。その最大の理由は、「越冬」のためです。テントウムシは、寒さが厳しくなる冬を乗り越えるために、暖かく、雨風をしのげる安全な場所を探し求めます。集団で身を寄せ合うことで、厳しい冬の寒さから互いの体を守り、生存率を高めるという、彼らの生存戦略なのです。自然界では木の皮の隙間や石垣の陰で冬を越しますが、現代の気密性の高い住宅は、彼らにとってまさに理想的な越冬場所、最高のシェルターとなります。特に、日当たりの良い南向きの白い壁などは、太陽の熱を効率よく吸収して暖かくなるため、最高の集合場所となります。そして、その壁にある窓サッシのわずかな隙間や、換気口、エアコンの配管の隙間など、私たちが気づかないような数ミリの入口から暖かい空気が漏れ出しているのを敏感に感知し、一匹が安全な場所を見つけると、仲間を呼ぶフェロモンを出して次々と集まってくるのです。家の中にいるテントウムシは、決してそこで繁殖しようとしているわけではありません。彼らはただ、春が来るまでの長い冬を、安全な場所でじっと眠って過ごしたいだけなのです。彼らの侵入は悪意のある侵略ではなく、ただ生き延びるための必死の行動にすぎません。この彼らの習性を理解することが、パニックにならず、冷静に対処するための第一歩となります。