それは、小春日和の穏やかな、11月のある日の午後のことでした。在宅勤務の休憩中に、何気なくリビングの南向きの窓に目をやった私は、そこに広がる異様な光景に、思わず息をのみました。窓枠の白いサッシの部分が、まるで黒い水玉模様のように、おびただしい数のテントウムシで埋め尽くされていたのです。その数、ざっと数えただけでも、百匹は下らないでしょう。彼らは、暖かい日差しを浴びて、蠢くように密集していました。最初は、その数の多さに圧倒され、恐怖と嫌悪感で体が固まってしまいました。幸運のシンボルも、ここまで集まると、もはやホラー映画のワンシーンです。私はパニックになりながらも、インターネットで対処法を検索し、彼らが越冬のために集まってきていること、そして益虫であるため、できれば殺さずに追い出すのが望ましいことを知りました。私は意を決し、掃除機を手に取りました。しかし、ただ吸い込むだけでは、彼らを殺してしまう。そこで、ノズルの先に、古いストッキングを輪ゴムで固定し、即席の捕獲フィルターを作りました。吸引力を一番弱く設定し、窓枠の集団にそっとノズルを近づけると、テントウムシたちは、面白いように、しかし優しく、ストッキングの中に吸い込まれていきました。全ての捕獲を終えた後、私はストッキングをそっとノズルから外し、庭の木の根元で、彼らを解放しました。解放されたテントウムシたちが、一斉に飛び立っていく光景は、どこか幻想的でさえありました。しかし、戦いはまだ終わりではありませんでした。私はその日のうちに、家中のサッシの隙間をテープで目張りし、ハッカ油のスプレーを窓という窓に吹き付けて回りました。あの日以来、我が家でテントウムシが大量発生することはありません。あの窓枠を埋め尽くした黒い絨毯は、私に、家の気密性の重要性と、自然の営みのダイナミズムを、同時に教えてくれた、忘れられない出来事となったのです。
ある日窓枠がてんとう虫だらけになった話