幸運のシンボル、益虫といったポジティブなイメージが強いテントウムシですが、一度、家の中に大量発生した場合、彼らがもたらすのは、単なる「不快感」だけではありません。実は、私たちの健康や生活環境に、直接的な「害」を及ぼす可能性があるという、あまり知られていない側面も持っているのです。まず、最も多くの人が経験するのが、彼らが放つ「黄色い液体の被害」です。テントウムシは、危険を感じたり、外部から強い刺激を受けたりすると、脚の関節から、独特の臭いを放つ黄色い液体を分泌します。これは、彼らの血液であり、敵に対する防御行動の一種です。この液体は、非常に強い臭気を持ち、一度、壁紙や白いカーテン、あるいは衣類などに付着すると、洗濯してもなかなか落ちない、頑固な黄色いシミとなって残ってしまうことがあります。次に、近年問題となっているのが、「人を噛む」という行為です。特に、外来種として繁殖力の強いナミテントウなどは、時に人間の皮膚を噛むことがあります。毒はなく、激しい痛みを伴うものではありませんが、チクッとした刺激があり、肌の弱い人にとっては、不快なだけでなく、アレルギー反応の原因となる可能性も否定できません。そして、最も見過ごされがちなのが、「アレルギー」の可能性です。テントウムシが家の中で大量に越冬し、春になると、その死骸やフンが乾燥して微細な粒子となります。これがハウスダストの一部となり、空気中に舞い上がり、それを吸い込むことで、人によっては、くしゃみや鼻水、あるいは喘息といったアレルギー症状を引き起こす原因となり得るのです。これは、ダニやゴキブリのアレルギーと同様のメカニズムです。可愛らしい見た目に惑わされず、彼らの大量発生がもたらす、これらの潜在的なリスクを正しく理解すること。それが、適切な対策を講じ、家族の健康を守る上で、非常に重要なことなのです。
てんとう虫の意外な害とアレルギーの可能性