家に蜂が入ってきた時、私たちの恐怖心は、時に冷静な判断力を奪い、事態を悪化させる危険な行動へと駆り立てます。パニックの中でも、これだけは絶対にやってはいけない、というNG行動を覚えておきましょう。まず、最大のNG行動は「大声を出して騒ぐ、走り回る」ことです。大きな音や、急な動きは、蜂を極度に興奮させ、攻撃のスイッチを入れてしまう最も危険な行為です。蜂は、黒いものや動くものを敵と認識する習性があります。騒げば騒ぐほど、あなたは蜂にとっての「格好のターゲット」になってしまうのです。次に、「手で払いのけようとする」のも絶対にやめましょう。蜂は、自分の身に危険が迫ったと感じた時に、最後の防御手段として針を使います。手を振り回す行為は、蜂にとって明確な「攻撃の合図」と受け取られ、刺されるリスクを飛躍的に高めます。同様に、タオルや雑誌、スリッパなどで叩き落とそうとする行為も、非常に危険です。たとえ一撃で仕留めたとしても、その衝撃で、蜂の体内から仲間を呼ぶ「警報フェロモン」が放出されることがあります。特に、家の近くに巣がある場合、このフェロモンを感知した仲間たちが、一斉に攻撃を仕掛けてくるという、最悪の事態を招きかねません。そして、意外とやりがちなのが「殺虫剤をむやみにスプレーする」ことです。もちろん、最終手段として殺虫剤は有効ですが、蜂が興奮して飛び回っている状態でスプレーをかけると、薬剤に驚いた蜂が、錯乱してあなたに向かってくる可能性があります。また、薬剤が家具や壁にかかってしまい、シミや変色の原因となることもあります。殺虫剤を使うのは、蜂が壁や窓に止まり、動きが静止した瞬間を狙うべきです。蜂との遭遇は、いわば「神経戦」です。相手を刺激せず、冷静さを保ち、静かに行動すること。それが、あなた自身の安全を守るための、唯一にして絶対のルールなのです。