「蜂の巣にハッカ油を直接スプレーすれば、匂いで逃げていくだろう」これは、ハッカ油の逆効果の中でも、最も危険で、絶対にやってはならない、自殺行為にも等しい過ちです。この行動がなぜそれほどまでに危険なのか、その背景にある蜂の防衛本能と、ハッカ油が引き起こす最悪の化学反応について理解する必要があります。蜂、特にアシナガバチやスズメバチは、非常に高度な社会性を持ち、巣を守るためには命を惜しまない、優れた戦士です。彼らの巣には、常に外敵の侵入を監視する「見張り役」の蜂がいます。この見張り役が、巣に近づく脅威を感知したり、巣に直接的な攻撃(液体を吹きかけられる、振動を与えるなど)を受けたりすると、危険を知らせるための「警報フェロモン」を体から放出します。この警報フェロモンは、巣の中にいる仲間たちに対して、「敵襲!総員、出撃せよ!」という、最高レベルの警戒命令となります。この命令を受け取った働き蜂たちは、瞬時に戦闘モードへと切り替わり、巣を守るために一斉に巣から飛び出してきて、侵入者を猛攻撃します。ここで問題となるのが、ハッカ油の役割です。ハッカ油の主成分であるメントールは、蜂を殺すほどの毒性はありません。しかし、その強烈な刺激臭は、蜂の神経を著しく刺激し、混乱させ、そして何よりも「激怒」させます。つまり、巣にハッカ油をスプレーする行為は、敵の砦に、殺傷能力のない刺激性のガスを投げ込むようなものです。それは、敵を無力化するどころか、最大限に興奮させ、凶暴化させるだけの、最悪の挑発行為なのです。警報フェロモンとハッカ油の刺激という二つの相乗効果によって、パニックと怒りの頂点に達した蜂の群れは、もはや手がつけられません。ハッカ油は、平和なコロニーを、凶暴な殺人集団へと変貌させる、危険な触媒となり得る。その恐ろしさを、決して甘く見てはいけません。
巣への直接噴射は自殺行為!ハッカ油が蜂を凶暴化させるメカニズム