春先の衣替えの季節。冬の間、お世話になったウールのセーターを片付けようと手に取った瞬間、そこに開いた無数の小さな穴に気づき、血の気が引く。服を食べる虫の被害は、多くの場合、このように、季節が巡り、長期間しまっていた衣類を取り出した時に、突如として発覚します。まるで、冬の間に、クローゼットの中で何か恐ろしい事件が密室で進行していたかのように。この「突然の発覚」という現象は、服を食べる虫たちの、巧妙に計算された一年間のライフサイクルを知ることで、その謎が解けてきます。全ての物語は、前の年の「春から初夏」にかけて始まっています。越冬を終えたカツオブシムシやイガの成虫が、屋外からあなたの家に侵入し、クローゼットの奥深く、あなたがこれから長期間着ることのない、冬物のウールやカシミヤの衣類に、そっと卵を産み付けます。これが、全ての悲劇の始まりです。そして「夏」。気温と湿度が上昇すると、卵は一斉に孵化し、小さな幼虫が誕生します。彼らは、暗く、静かで、誰にも邪魔されることのない、快適な環境の中で、ゆっくりと、しかし確実に、衣類の繊維を食べ始めます。この段階では、まだ食害の跡も小さく、私たちはその存在に気づくことはありません。「秋から冬」にかけて、幼虫は脱皮を繰り返しながら、さらに大きく成長し、その食欲も旺盛になります。私たちは、何も知らずに、彼らが潜むクローゼットのすぐそばで、日々の生活を送っているのです。そして、季節は再び「春」を迎えます。私たちが、ようやく冬物の衣類を手に取った時、そこには、何か月にもわたる幼虫たちの食事の痕跡が、無数の虫食い穴となって、初めて私たちの目の前に現れるのです。これが、被害が「突然」発覚するように見える、からくりです。つまり、被害に気づいた時には、すでに手遅れであり、敵は十分に成長し、次の世代を残す準備を始めている可能性さえあるのです。この時間差攻撃を防ぐためには、衣類をしまう前の「予防」がいかに重要であるか、そして、シーズン中であっても、時々はクローゼットの中を点検し、虫のサイン(成虫の姿や、フン、抜け殻など)がないかを確認する、継続的な警戒が必要となるのです。
服を食べる虫の被害はいつ、どのようにして発覚するのか