これまで、ハッカ油が逆効果になり得る様々な危険性について述べてきましたが、それは決して「ハッカ油は蜂対策に使ってはいけない」という意味ではありません。その効果の限界とリスクを正しく理解し、適切な「目的」と「方法」で用いるならば、ハッカ油は依然として、非常に有効で安全な予防ツールとなり得ます。ここでは、ハッカ油を蜂との戦いにおける頼もしい味方にするための、守るべき鉄則を解説します。第一の鉄則は、「目的を『予防』に限定する」ことです。ハッカ油の役割は、あくまで、巣を作られる前に蜂を遠ざけること。すでに作られてしまった巣の駆除には、絶対に使用してはいけません。この一線を、決して越えないでください。第二の鉄則は、「使用する『時期』を間違えない」ことです。最も効果的なのは、女王蜂が単独で巣作りを開始する「春先(4月~6月頃)」です。この時期に集中的に使用することで、最大の予防効果が期待できます。夏以降、巣が大きくなってからでは、その効果は限定的になります。第三の鉄則は、「使用する『場所』を厳選する」ことです。やみくもに散布するのではなく、蜂が巣を作りやすい、雨風をしのげる場所、すなわち「軒下」「ベランダの天井や隅」「玄関のひさし」「窓枠」「エアコンの室外機の裏」といったポイントに、狙いを定めてスプレーします。第四の鉄則は、「『継続』を怠らない」ことです。ハッカ油の効果は永続的ではありません。特に、雨が降った後は、効果が洗い流されてしまいます。最低でも週に一度、雨の後には必ず、というように、根気強く散布を続けることが、香りのバリアを維持するための鍵となります。そして最後の鉄則が、「異変を感じたら、すぐに使用を中止し、専門家に相談する」ことです。予防策を講じていたにもかかわらず、蜂の飛来が頻繁になったり、小さな巣が作られ始めたりしたら、それはもはやハッカ油で対処できるレベルを超えています。その際は、潔く作戦を中止し、プロの判断を仰ぐ勇気を持ってください。これらの鉄則を守って初めて、ハッカ油は、その真価を安全に発揮することができるのです。
ハッカ油を蜂対策に正しく使うための鉄則