新しい生活に胸を躍らせて引っ越したばかりの部屋。まだ荷解きも終わっていない初日の夜、キッチンのシンクの隅で、私は数ミリの小さな黒い点を見つけました。それがカサカサと動くのを見た瞬間、私の期待は絶望へと変わりました。新居にいたのは、チャバネゴキブリの赤ちゃんでした。引っ越し前に内見をした時には気づきませんでしたが、空き部屋になっていた期間に、どこからか侵入した親が卵を産み落としていたのでしょう。それからの毎日は、目に見えない敵との果てしない戦いとなりました。一匹見つけるたびに殺虫剤を手に取りましたが、追いかけても家具の裏側の、到底手の届かない隙間に逃げ込まれてしまいます。赤ちゃんゴキブリは翅がないため飛ぶことはありませんが、その脚の速さは驚異的で、壁や天井を自在に走り回ります。私は考え方を変えました。ただ追いかけるのではなく、彼らが「ここにいたい」と思わない環境を自ら作り出すことにしたのです。まず、段ボールをすべてその日のうちに解体して処分しました。段ボールの波状の隙間は、彼らにとって最高の隠れ家になるからです。次に、キッチンの棚のすべての隙間をアルミテープやパテで塞ぎ、外部からの侵入経路と潜伏場所を物理的に遮断しました。さらに、夜寝る前にはシンクの水を一滴残らず拭き上げ、彼らが水分を補給できないようにしました。格闘を始めてから二週間、設置した毒餌剤の周りで動かなくなっている赤ちゃんを数匹見つけ、それ以降、新しい影を見ることはなくなりました。この経験を通じて学んだのは、ゴキブリの赤ちゃんの存在は「部屋全体の健康状態」を映し出す鏡のようなものだということです。彼らがいなくなる頃、私の部屋は引っ越してきた時よりも遥かに清潔で、整理整頓された空間になっていました。赤ちゃんゴキブリとの闘争は、不快な経験ではありましたが、自分の城を自分の手で守り抜くという強さと、衛生管理に対する深い知識を私に与えてくれました。今でもキッチンの明かりをつける時は一瞬の緊張が走りますが、徹底した対策を講じたという自信が、私を不安から救ってくれています。新しい家での平穏は、小さな敵との戦いの末に勝ち取った、何物にも代えがたい果実なのです。