私が古美術の世界に身を置いてから数十年、数多くの美しいアンティーク絨毯やタペストリーを扱ってきましたが、それら歴史的価値のある織物にとって最大の脅威は、時間の経過による劣化ではなく、カツオブシムシの幼虫による食害です。何百年もの時を経て、異国の地から運ばれてきた絹や羊毛の織物が、たった数週間の不注意によって無残な虫食い穴だらけになってしまう光景を、私は何度も目にしてきました。カツオブシムシ幼虫は、特に古くて高品質な繊維を好む傾向があるようにさえ感じられます。それはおそらく、古い繊維には当時の染色に使われた天然の染料や、蓄積された微細な有機物が豊富に含まれており、彼らにとって理想的な栄養バランスを提供しているからでしょう。ある時、私はヨーロッパのオークションで落札された十九世紀のペルシャ絨毯を預かりました。一見すると色鮮やかで完璧な状態に見えましたが、毛足を逆立てて根元を精査した瞬間、血の気が引く思いがしました。繊維の奥深くに、カツオブシムシ幼虫の脱皮殻がびっしりと付着しており、さらに数匹の活発な幼虫が、手織りの結び目を根こそぎ食い荒らしていたのです。彼らは表側からは見えないよう、絨毯の裏面や厚みの中心部分を選んで移動します。そのため、表面に穴が開いた時には、すでに内部の構造はスカスカになっていることが少なくありません。この時学んだのは、アンティークを扱う上で「見た目」を信じてはいけないということです。カツオブシムシ幼虫は、古い織物の複雑な織り目の隙間に完璧に同化し、数ヶ月間も静止したまま獲物を待ち構えることができます。我々業者がアンティーク絨毯を入荷した際に行う最初の儀式は、徹底的な洗浄と検疫です。まず、特殊な低圧のバキュームで目に見えない埃や幼虫の卵を吸い取り、次に素材を傷めない特殊な溶剤を用いて、繊維の奥まで薬剤を浸透させます。それでも不安な場合は、気密性の高い部屋で数日間、脱酸素剤を用いた無酸素状態を作り出し、生命活動を完全に停止させます。一般のコレクターの方に強くアドバイスしたいのは、アンティークを「飾りっぱなし」にしないことです。ブチムシ幼虫が最も好むのは、家具の下に敷かれたまま動かされることのない絨毯の端や、壁に掛けられたまま空気の流れないタペストリーの裏側です。月に一度は掃除機をかけ、たまに位置をずらして光を当てるだけで、彼らが住み着く確率は激減します。また、羊毛の絨毯の上に、誤って食べかすを落としたり、ペットの毛が溜まったりした状態は、カツオブシムシ幼虫への招待状を送っているようなものです。彼らにとって、古い名画や貴重な織物は、単なる「高級なレストラン」に過ぎません。我々人間がそれを「芸術」として守りたいのであれば、彼らよりも細かく、執拗なまでの観察眼を持たなければなりません。カツオブシムシ幼虫との戦いは、美しさを維持するための終わりのない対話なのです。